あの歌の話

 たぶんこれは長い間の両者の関係に根本問題があるのだろうが、著作権という観点からは、考えさせられるニュースである。

 頭に語りをつけたくらいなら著作権侵害にならないというヒトもいれば、歌詞全体にかかるイメージが変わるならば著作権侵害になるというヒトもいる。

 私は、歌に与える影響を考えれば、頭に歌詞を付け加えることは歌を変えることになると思うので、著作権の侵害という考え方に従うならば、後者の考え方になる。

 もともと、歌というのは誰のものでもなかったのだろう。誰かが作って、面白いと思えば歌い継がれて、歌い継がれているうちにメロディや歌詞が移り変わっていくのが、普通の歌だったのだろう。

 でもそれはやがて作曲や、作詞や、歌や演奏そのものが商売になり、それもいわば買いきりではなくて権利が残るようになって、・・・えーとめんどくさいので中略、音楽産業がビッグビジネスとなって今日に至る、と。

 だから、この件は歌を変えてしまったことは確かで、著作権侵害に当たるが、しかし著作権に保護される音楽産業のなかの音楽はもはや昔の音楽、生きた歌ではないのだ。なんていうのも当たり前すぎる話ですけど。

 実際には私らは酔っ払ってテキトーな替え歌を歌ったり趣味のコピーバンドやったり友達でCDやDVDまわしたりしているわけで、微妙なグレーゾーンに、生きた音楽がたしかに息づいているのだが、ちいさなジャズ喫茶が使用料払えなくてつぶれたなんて話を聞くと、それも狭まってきたリアルな息苦しさがある。

 ところで私がいちばん弱い歌は「母さんの歌」(窪田聡作詞作曲)です。泣けて歌えません。今調べてみたらこれは私が生まれた年に生まれた歌でした。ネットをたどると、最近のミニコンサートの様子がアップされていたり、歌いだしが「かあさんは」なのか「かあさんが」なのかという話題があったりする。やっぱり歌は生きている、としみじみ。