訃報

 木村尚三郎弓削達が相次いで亡くなった。私は大学時代、講座はまったく違ったので個人的に話したこともないのだが、両先生の講義を受講したことがある。木村先生は堂々とした外向的な印象で、テレビなどでもよくお見かけしていた。今の学習指導要領で地歴科と公民科を分け、「世界史」を必修にしたときも、確か木村先生は中教審だったか教課審だったかで活躍されていたかと思う。

 一方の弓削先生は、ほっそりとして訥々と講義を進める方だった。一度、木村先生と二人でテレビに出ておられたのを見て、恰幅といい語り口といい、押しが強く慣れた感じの木村先生と対照的だなあと感じた。教養課程の歴史の講義中だったと思うのだが、自分はなぜローマ史を選んだか、という話をなさった。「果物は、腐りかけたところが一番おいしい。歴史も、腐りかけた時代が一番面白いのです。」なるほどなあ、と思った。あれから30年たった今でも、このコトバは忘れない。その後、フェリスの学長となって、大嘗祭に異議を表明して自宅が銃撃されるという事件に驚いた。正直なところ、小柄でおとなしそうないかにも古代史の学者という印象だったのに、気骨ある姿に打たれた。ずっと尊敬していました。アーメン。